製薬業界の大再編って?
今年四月、山之内製薬と藤沢薬品工業は合併し「アステラス製薬」となり、十月には三共と第一製薬が持ち株会社方式により経営統合することが決まっている。これにより国内製薬業は三強時代に突入するわけですが、なぜここに来てこのM&A(合併・買収)の嵐?
その背景にあるのは世界規模の大再編や商法改正。2006年の商法改正で外国企業が日本企業を買収しやすくなるのですが、それに対する日本企業の防衛はお粗末もいいところ。防衛策が乏しいだけでは無く、最大の問題は株式時価総額の低さ。日本最大手の武田薬品工業(時価総額4.4兆円)でさえ、世界最大手のファイザー(時価総額約28兆円)の1/7しかない。背景には、この10年ほど全世界で繰り広げられた製薬業界の大規模なM&Aの波がある。今後、バイオ技術を使った研究開発に取り組んでいくためにも、生き残りには「年間の売り上げ高1兆円・研究開発費1000億円」が最低ラインと言われる。そのため90年代後半には世界規模のM&Aの嵐が吹き荒れたのだが、日本の製薬企業は同族経営が多く、また国の規制が手厚かったためこの波に乗り遅れた。そこで、商法改正前のここに来て、というわけである。
世界の大手製薬企業上位20社の売上高一覧表(2003年)
※アステラス製薬と三共+第一製薬の連合は二社の売上高合計値の概算です・1ドル=115円弱で計算しています※
順位 |
企業名 |
売上高 |
1 |
ファイザー(米) |
396億3100万ドル |
2 |
グラクソ・スミスクライン(英) |
323億6200万ドル |
3 |
メルク(米) |
224億8600万ドル |
4 |
アベンティス(EU) |
211億5700万ドル |
5 |
ジョンソン&ジョンソン(米) |
195億1700万ドル |
6 |
アストラゼネカ(スウェーデン・英) |
183億1800万ドル |
7 |
ロシュ(スイス) |
172億4100万ドル |
8 |
ノバルティス(スイス) |
160億200万ドル |
9 |
ブリストルマイヤーズ・スクイブ(米) |
149億2500万ドル |
10 |
ワイス(米) |
126億2300万ドル |
11 |
イーライ・リリー(米) |
125億8300万ドル |
12 |
バイエル(独) |
111億7700万ドル |
13 |
サノフィ・サンテラボ(仏) |
101億4000万ドル |
14 |
ベーリンガー・インゲルハイム(独) |
89億400万ドル |
15 |
武田薬品(日) |
87億4100万ドル |
16 |
アボット(米) |
86億1400万ドル |
17 |
三共・第一製薬連合(日) |
80億ドル強 |
18 |
アステラス製薬(日) |
80億ドル弱 |
19 |
アムジェン(米) |
78億6800万ドル |
20 |
シェリング・プラウ(米) |
66億7200万ドル |
日本は最大手の武田さえ15位、3強とは言えトップ20に辛うじて入っているにすぎない。とは言え、この三社が今後の日本の製薬業界における再編の核となって、M&Aは一層加速する可能性が高い。
当面は、再編によって国内三位から四位に転落するエーザイの行方が注目されるが、日本には他にも売上高1000億〜3000億程度の比較的小規模の製薬企業が多数あるため、生き残りをかけた再編は今後も続いていくだろう。
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